体が疲れやすい、
疲れが取れない、眠い
多くの方々が、疲労や体力の低下を単に「年齢のせい」と考え、諦めてしまうことがあります。しかし、疲れの背景には「肉体的」「精神的」「神経的」な要因があり、これらは密接に関連しています。疲れが持続する場合、それは何らかの健康問題の兆候である可能性もあります。
疲れを放置すると、その状態は悪化しやすく、慢性的な疲労や深刻な体調不良につながる恐れがあります。強い疲労感は日常生活に支障をきたし、気分の低下や新たな健康問題の原因となることもあります。
こうした悪循環を防ぐためにも、持続的な疲労や深刻な倦怠感がある場合は、医療機関を受診することを推奨します。
肉体的なもの
筋肉を長時間にわたり持続的に使用し、緊張させると、エネルギー代謝の過程で「乳酸」が生成されることがあります。この乳酸の一時的な蓄積が、筋肉の疲労感やだるさを引き起こす一因とされています。また、定期的な運動を行わないと、筋肉は徐々に弱まり、萎縮してしまいます。その結果、少しの運動でも疲労を感じやすくなります。さらに、エネルギー不足の状態(例:栄養不足や糖質の枯渇)で筋肉を使うと、筋肉のエネルギー供給が追いつかず、疲労感が強くなることがあります。
精神的なもの
家庭での問題や対人関係のストレスは、精神的な疲労を引き起こす主な原因の一つです。これは年齢に関係なく、誰にでも影響を及ぼす可能性があります。そのため、お子様が疲れや無気力を訴える際には、精神的なストレスが背景にある可能性を考慮することが重要です。
神経的なもの
思考や集中による疲れは、脳や視覚系の長時間にわたる過度な使用によって引き起こされます。例えば、仕事や学業で情報を処理する際のデスクワークが原因となることがあります。脳の疲れを解消する最も効果的な方法は、毎日の質の高い睡眠です。ただし、休日に過剰な「寝溜め」や長時間の昼寝をすることは、体内時計(概日リズム)を乱し、逆に疲労感を助長する可能性があります。そのため、睡眠時間は日々一定に保つことが推奨されます。また、適度な休憩やリラクゼーションを取り入れることで、脳の負担を軽減することも効果的です。
疲れやすい場合に考えられる病気
糖尿病・低血糖
糖尿病においては、インスリンという血糖値を調節するホルモンの不足、またはその効果の低下により、高血糖の状態が持続します。この高血糖が継続すると、疲労感の増加、喉の渇き、頻尿、体重の減少などの症状が現れることがあります。これらは、高血糖が長期間続くことで代謝が乱れ、エネルギー利用が効率的に行われなくなるためです。
一方で、低血糖の場合は、血液内のブドウ糖という主要なエネルギー源が不足し、これが疲れやすさ、歩行時のふらつき、冷や汗などの症状を引き起こすことがあります。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの不足により、全身の代謝が低下し、疲労感、食欲不振、便秘などの症状が現れる状態です。また、進行すると脈拍の低下や記憶力の低下といった症状が見られることもあります。
低血圧
低血圧では、血液循環の低下により、特に脳への血流が減少し、めまい、ふらつき、頭痛、倦怠感、さらには冷え性や集中力の低下などの症状が現れることがあります。低血圧の原因には、先天的な体質、脱水、栄養不足、運動不足、または筋肉量の減少などが挙げられます。また、特定の薬剤の副作用や内分泌疾患(例:副腎不全、甲状腺機能低下)などが原因となることもあります。
貧血
貧血は、ヘモグロビン(血液中の酸素を運搬するタンパク質)の減少により、体内の酸素運搬が不十分になり、疲れやすさ、立ちくらみ、めまい、ふらつき、さらには動悸や息切れなどの症状を引き起こします。また皮膚や粘膜の蒼白、集中力の低下といった症状が現れることもあります。貧血の原因としては、慢性的な出血(例:胃潰瘍や十二指腸潰瘍、悪性腫瘍)、栄養不足や吸収障害(特に鉄、ビタミンB12、葉酸の不足)、血液疾患(例:溶血性貧血、再生不良性貧血)、月経過多などが挙げられます。また、妊娠中や成長期における需要の増加により、相対的な鉄不足が貧血を引き起こすこともあります。
疲れやすい人の特徴・原因は?
疲労感は、単に過労や過度の運動による体力の消耗だけが原因ではありません。
日々の生活の中には、疲れを引き起こす様々な要因が隠れています。
運動不足
運動不足が原因で代謝が落ち込むと、血液循環が悪くなり、疲労物質の排出が困難になります。運動による体力の消耗が疲れの原因となることもあれば、逆に運動不足も疲れを引き起こす要因です。特に、長時間同じ姿勢でデスクワークをすると、血流が滞りがちで、肩こりや腰痛を伴う慢性的な疲労感を引き起こすことがあります。また、運動不足は筋力の低下を招き、日常活動での体力消耗を増加させ、精神的な疲れも感じやすくなります。適度な運動は体を疲れにくくするだけでなく、生活習慣病の予防にも役立ちます。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を日常に取り入れ、継続的に身体を動かすことを心がけましょう。
睡眠の質の低下
睡眠の量だけでなく、その質の低下も問題です。質の良い睡眠が得られないと、体と脳が必要とする回復を十分に受けられず、疲れが取れにくくなります。睡眠の質を保つために、日々の生活習慣に注意を払い、健康的な睡眠習慣を心がけることが大切です。
生活リズムを整える |
起床後は朝日を浴び、朝食をとることで体内時計を調節します。 |
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食事時間 |
就寝の3時間前までに食事を終えるようにしましょう。消化には約3時間かかります。 |
入浴習慣 |
体を温めるために湯船に浸かりましょう。ただし入浴は、就寝の1~2時間前には済ませましょう。 |
カフェイン |
夕方以降はカフェインの摂取を控えるようにしましょう。 |
ブルーライト |
就寝前1時間はスマートフォンやパソコンの使用を控え、ブルーライトをカットする製品を利用しましょう。 |
食生活によるもの
栄養バランスが崩れると、ビタミンやミネラルが不足し、疲れやすくなることがあります。特に鉄分、ビタミンB群、マグネシウムなどが不足すると、エネルギー産生や代謝が低下し、疲労感が強まる可能性があります。朝食は体内時計を整える役割も持っており、食べないことで栄養不足だけでなく、体のリズムも乱れがちです。
このリズムの乱れは自律神経の不調にも繋がり、疲労の一因となります。さらに、胃腸に負担をかける不適切な食習慣も疲れを引き起こします。例えば、「早食い」「寝る前の食事」「十分に噛まずに食べる」などは消化不良を引き起こし、胃腸への負担を増大させます。また、炭水化物や糖質を過剰に摂取すると、血糖値が急上昇し、それを抑えるために分泌されるインスリンによって血糖値が急降下し、低血糖状態になります。
これが強い疲労感の原因になるため、食生活に注意し、疲れを溜めないようにしましょう。
ストレス
ストレスは疲れの一因となり得ます。ストレスが自律神経に影響を与えると、交感神経が優位になり、脳や体が緊張状態に陥ります。この持続的な緊張が心身の負担を増加させ、結果的に疲労感を強める原因となります。
ストレスの原因は多岐にわたりますが、それを定期的に解消する方法を見つけることが重要です。
姿勢によるもの
不適切な姿勢は、特定の筋肉群に過度なストレスを与え、疲れやすくなる原因となります。活動量が少ない方や、長時間同じ姿勢でデスクワークをする方は、筋肉のこわばりによる疲労を特に感じやすいです。以下のような習慣がある人は、姿勢の歪みに注意が必要です。
- 足を組んで座ることが多い方
- 横座りを頻繁にする方
- 片足に体重をかけて立つ癖のある方
- カバンを長時間片肩にかけたり、
片手で持ち続けたりする方 - よく頬杖をつく方
- 猫背が癖になっている方
姿勢の歪みは、肩こりや腰痛を引き起こし、慢性化すると疲れやすさや疲れの回復が遅くなる原因となります。日常の行動や姿勢を見直し、姿勢の改善に努めることが大切です。
疲れやすい時の検査
疲労が持続する場合、潜在的な病気の可能性があるため、当院では問診後に適切な検査を実施します。
超音波検査
甲状腺の異常を検出するために、その形状や大きさ、結節の有無、腫れなどをチェックします。
血液検査
貧血、糖尿病、低血糖の状態を調べるほか、甲状腺ホルモンや抗体のレベルを測定して甲状腺機能の低下や甲状腺疾患の有無をチェックします。
肝機能検査
肝臓の健康状態を調べ、肝機能障害が疲労の原因でないかを検討します。
電解質検査
ナトリウム、カリウム、クレアチニンなどの電解質バランスを測定し、疲労に影響している可能性があるかを調べます。
感染症検査
感染症が疲労の根本原因であるかどうかをチェックします。
心電図
心臓の機能に異常がないかを検査し、心臓の問題が疲労に関連しているかをチェックします。
尿検査
疲れやすさを直接測定することはできませんが、疲れの原因となる身体の異常を間接的に把握するのに役立ちます。
疲れやすい体を改善する方法
生活習慣を見直すことは、疲れにくい体を作るための第一歩です。以下に挙げる点を参考にして、日々の習慣を改善してみてください。
それでも症状が改善しない場合や、疲れ以外の気になる症状がある場合は、医療機関で相談を検討しましょう。
食事
健康的な食事は、バランスが重要です。エネルギー代謝を促進する栄養素であるクエン酸(主に柑橘類や酢に含まれる)、ビタミンB1(豚肉や玄米などに豊富)、ビタミンB2(乳製品や卵などに含まれる)を意識的に摂取することが大切です。これらの栄養素は、疲労回復やエネルギーの効率的な利用をサポートします。
また、朝食は1日のリズムを整え、体温を上げ、脳や筋肉の活動を活性化させる役割を果たします。朝食を抜くと、長時間にわたり身体がエネルギー不足の状態に陥りやすく、集中力の低下や疲労感につながる可能性があります。1日3食を規則正しく摂ることを心がけましょう。
運動
軽い運動は血流を促進し、筋肉に溜まった代謝産物(乳酸)の排出を助けることで、疲労回復に効果をもたらします。さらに、運動は脳内でセロトニンやエンドルフィンといった神経伝達物質の分泌を促し、ストレス解消にもつながります。適度なウォーキングやストレッチなど、負担が少なく継続しやすい運動が特に推奨されます。
睡眠
体と脳を休息させるためには質の良い睡眠が欠かせません。毎日の適切な睡眠時間(成人では7~9時間が目安)を確保し、寝室環境を整え、夜更かしや寝坊を避けることで体内リズムを保ちましょう。また、寝る前にはスマートフォンを見ないようにしましょう。
入浴
体を温めることで筋肉の緊張が和らぎ、血流やリンパの流れが改善されます。これにより、疲労物質の排出が促され、疲労回復に役立ちます。
心臓疾患の有無の確認
心臓の健康は疲労感に大きく影響します。心臓に異常がないか定期的にチェックし、疲れの原因となっていないか確認しましょう。
疲れやすい状態が続く場合は
当院までご相談ください
もし十分な休息を取っても疲れが解消されない場合、それは何らかの病気が原因である可能性があります。当院では、患者様1人ひとりに丁寧な問診と検査を行い、正確な診断と適切な治療法を提案します。継続する疲労感にお悩みの方は、ぜひ当院へご相談ください。