蛋白尿とは
蛋白尿は、尿中に異常に多くのタンパク質が排泄されている状態を指します。具体的には1日に150mg以上のタンパクが持続的に排泄されている状態です。蛋白尿は、末期腎不全(腎代替療法が必要な段階)や心血管疾患(例;心筋梗塞、脳卒中)による死亡リスクを増加させることが、多くの臨床研究で明らかにされています。そのため、蛋白尿の早期発見と原因疾患の適切な治療が非常に重要です。
健康な腎臓では、通常タンパク質が尿に混入することはありません。その理由は、腎臓が血液から老廃物や塩分を取り除き、尿として体外に排出する際に、血液は「糸球体」と呼ばれるフィルターを通過するからです。このフィルターは、赤血球やタンパク質などの必要な成分を血液中に留め、老廃物のみを尿へと分ける仕組みになっています。腎臓には約100万個の糸球体が存在し、この機能を担っています。そのため、タンパク尿が観察される場合、糸球体を含む腎臓に何らかの問題が生じている可能性があります。
蛋白尿の基準値(1+、2+)
タンパク尿の検査には、「定性」と「定量」の2つの方法があります。検査結果は次のように表示されます。
定性:(-)・(±)・(1+)・(2+)・(3+)・(4+)
定量:●●㎎/gCre,●●mg/日
定性検査では尿中のタンパク質のおおよその量を確認でき、定量検査ではタンパク尿の正確な量を数値で示します。定性検査では、(-)が「異常なし」、(±)が「注意が必要」、(1+)以上で「蛋白尿陽性」と判断され、早急に医療機関での詳細な検査が推奨されます。
尿試験紙法(定性法)の判定基準
(-) | 蛋白濃度が15mg/dL未満 |
---|---|
(±) | 15-29mg/dL |
(1+) | 30mg/dL |
(2+) | 100mg/dL |
(3+) | 300mg/dL |
(3+) | 1000mg/dL |
尿蛋白(定量法)の判定基準
正常:1日あたりのタンパク排出量が150mg未満
軽度:1日あたりのタンパク排出量が150mgから500mg未満
高度:1日あたりのタンパク排出量が500mg以上
これらの数値は、24時間分の尿を集めて測定することで得られます。
蛋白尿に伴う症状
腎臓の病気は初期段階では症状が現れないことが多いです。しかし、尿中の蛋白質が増加すると、排尿時に泡立ちが目立つようになります。尿が細かい泡で覆われ、1分以上経過しても泡が消えない場合があります。尿がクリーム状に見えると表現されることもあります。尿中に含まれる蛋白量に応じて、腎機能低下が進行しやすいと言われています。腎機能の低下が進むと、足のむくみや体の倦怠感、瞼のむくみ、動悸や息切れなどの症状が出始めます。
蛋白尿に加えて血尿(尿潜血陽性)が見られる場合は、腎臓の病気が進行している可能性があります。透析を避けながら病状の悪化を防ぐためにも、早期の治療が重要です。このような症状が見られたら、迅速に医療機関を受診することをお勧めします。
蛋白尿が出る原因
蛋白尿が確認される全ての方が腎臓疾患を抱えているわけではありません。実際、蛋白尿には無害なものも含まれます。蛋白尿は、生理的蛋白尿と病的蛋白尿に大別され、臨床的に問題がない場合は生理的蛋白尿です。生理的蛋白尿は、激しい運動後や発熱時にみられる機能性蛋白尿と、前屈や立位(起立時)にみられる体位性蛋白尿に分けられます。これらの場合、早朝の尿検査や別日の再検査で確認することができます。
病的な蛋白尿の原因としては、糖尿病性腎症、横紋筋融解症、慢性糸球体腎炎、高血圧、膠原病などが挙げられます。
タンパク尿検査で(1+)の結果が出た場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、詳細な検査を受けることが重要です。適切な治療が遅れると、腎機能障害が進行し、最終的には透析を余儀なくされる恐れもあります。
病的蛋白尿の分類と原因
血液中に異常な タンパクが 増えすぎる |
横紋筋融解症、溶血性貧血、心不全、甲状腺機能亢進症、 多発性骨髄腫、アミロイドーシスなど |
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腎臓由来 | 糸球体腎炎、腎硬化症、糖尿病性腎症、膠原病、アミロイド腎、 クリオグロブリン血症、妊娠高血圧腎症、尿細管間質性腎炎、Fanconi症候群、薬剤性腎障害など |
泌尿器由来 | 尿路感染症、尿路結石症、尿路悪性腫瘍など |
蛋白尿の改善・治療方法
蛋白尿の管理には、食事、運動、薬の3つのアプローチをバランスよく組み合わせることが効果的です。個々の病状、運動習慣、筋肉量、食生活に合わせた細やかな調整が必要です。
無症状であっても、尿蛋白が持続的に陽性を示す場合、腎疾患が隠れている可能性があります。例えば、糖尿病腎症の場合、3期(顕性タンパク尿)まで進行すると、食事や運動に注意しても、徐々に腎臓の機能が悪化し、最終的に透析が必要になることも少なくありません。蛋白尿を減らし、透析の必要性を遅らせるためには、早期に糖尿病や腎臓の専門医の診察を受けることが重要です。
自己判断でサプリメントを摂取したりジム通いなどで運動を習慣化したりする行為は、場合によっては逆効果となることがありますので注意が必要です。
尿蛋白に関してご不安がある方は、いつでもご相談にいらしてください。
尿潜血について
尿潜血反応陽性=血尿ではありません。尿潜血反応陽性は、「尿中に血液成分が存在するかもしれない」状態で、血尿は、「尿中に赤血球が存在する」状態です。尿潜血の検査が、尿中の赤血球を直接測定しているわけではないからです。赤血球を直接確認するためには、尿沈渣検査が必要です。尿潜血反応が陽性で、さらに尿沈渣検査で赤血球が確認された場合に、初めて血尿と診断されます。
血尿は色々な病気のサインとして起こるもので、発熱や尿道のかゆみ、違和感、痛みが伴う場合、腎炎や膀胱炎などの尿路感染症が疑われます。背中の激しい痛みがある場合は、尿路結石の可能性も考えられますので、速やかに医療機関を受診しましょう。
尿潜血が陽性であっても症状がほとんど目立っていない場合は、腎臓や尿管、膀胱、尿道などからの出血が疑われます。尿潜血と尿蛋白が同時に陽性の場合は、糸球体の異常が疑われるため、早期に治療が必要となる場合があります。
また、肉眼的血尿、つまり目に見えて赤い尿が出た場合は特に注意が必要です。一度の出血であっても、泌尿器科の受診をお勧めします。その場合、膀胱がんや腎がん、尿管がんなどの重大な疾患が隠れている可能性があります。
尿潜血の検査結果は、細菌尿、ミオグロビン、内服薬による偽陽性や、ビタミンCの過剰摂取、高蛋白尿による偽陰性の影響を受けることがあります。健康診断で尿潜血反応陽性が出た場合でも、実際の血尿であるかを確認するために再検査を受けることが大切です。
さらに、尿潜血が頻繁にみられるものの、明らかな異常がなく、腎機能の徐々な悪化を見逃してしまうことがありますので、まずは医療機関にご相談ください。