- 「しびれ」の相談をする前に…
- 手足の“しびれ”はどうして起こるのか?
- どうやって、糖尿病性神経障害
(糖尿病による“しびれ”)と診断するのか? - 糖尿病性神経症と糖尿病の関係、
他の合併症は? - 実は、“痛みを感じにくい”方がゾッとする?
- 糖尿病の危険度セルフチェックリスト
「しびれ」の相談をする前に…
しびれには様々なタイプがありますが、以下の症状に該当する場合は注意が必要です
- 急にしびれが始まり、
その開始時刻が明確に分かる - しびれがあり、
手足が動かなくなる(特に片側だけの場合)
これらの症状が両方とも当てはまる場合は、すぐに医療機関への受診が必要です(119番に電話するか、急いで医療機関へお問い合わせください)。
手足の“しびれ”は
どうして起こるのか?
しびれとは、
一般的には以下のような感覚を指します
- 手足がジンジンする
- 足の裏がピリピリする
- 何かがずっと熱いような感じ
しかし、以下の症状を
「痺れ」と表現されることもあります
- 痛みが感じにくい(感覚の低下)
- 手足の動きが悪い(運動障害)
しびれの原因には様々なものがありますが、主なものには以下があります
圧迫
手根管(手のひら側、手首の中央に通る管)症候群のように、神経が圧迫されて手の平(特に親指~薬指)に痺れが生じる。
血流の低下
正座などによって膝窩動脈が圧迫され、足の血流が低下する。
代謝の問題(異常な物質の蓄積や
神経伝達に影響を及ぼす)
その他の影響(ビタミン不足、炎症、
感染症、薬剤反応など)
糖尿病におけるしびれの自覚には、
特に以下の要因が関係しています
血流の低下
高血糖による血管損傷や血液の粘度上昇により、末梢神経への栄養供給不足が引き起こされ、神経障害が生じる。
代謝の異常
糖分の過剰な代謝産物や高血糖によって細胞がダメージを受け、神経障害が生じる。
どうやって、糖尿病性神経障害
(糖尿病による“しびれ”)と
診断するのか?
血糖値のように、「特定の検査で数値がこれ以上なら」という明確な基準は存在しません。診断は主に問診と診察によって行われ、その過程で他の病気の可能性を排除していきます。この段階で、必要に応じて追加の検査を実施することもあります。
問診
糖尿病による神経障害は、
通常以下のような特徴を示します
- ジンジンする、ピリピリする痛みや、
焼けるような痛み - 手足の末梢部分、特に足先や手先に
強く現れる「手袋靴下型」の痺れで、
左右対称に感じる - 触った感覚が鈍い
さらに、糖尿病性神経障害の症状には、一般的に下記のような特徴があります
発現状況がはっきりしない
糖尿病性神経障害では、痺れの症状は通常、末梢の血流障害や代謝異常が生じることによって徐々に現れます。多くの場合、「数ヶ月前から気づいた」「最近痺れを感じ始めた」といった経過をたどります。
一方で、「数日前から」「特定の時間から」といった明確な発症時刻が分かる場合は、急性の圧迫や血流障害が発生している可能性があり、速やかな医療機関での受診が推奨されます。
両側性
末梢の血流障害や代謝異常が片方の手足にのみ発生することは稀で、通常は両側に影響します。片側だけに症状が現れる場合は、圧迫や血流障害が片側にのみ発生している可能性が考えられます。
上肢よりも下肢に症状が出やすい
糖尿病性神経障害では、長い神経繊維がダメージを受けやすいため、一般的には下肢に症状が強く現れます。
運動障害よりも感覚神経がメイン
糖尿病性神経障害では、細い神経繊維(痛みや温度を感じる神経)が影響を受けやすく、痺れや痛みなどの感覚障害が主な症状として現れます。
診察
診察時には、まず靴下を脱いでいただき、足の状態を視覚的に確認します。その後、以下の道具を使用して神経の機能を評価します。
ハンマー
アキレス腱反射をチェックします。糖尿病性神経障害がある場合、反射の低下がしばしばみられます。
音叉
振動覚を評価します。糖尿病性神経障害がある場合、しばしば振動覚の低下がみられます。ただし、年齢による影響もあるため、結果については慎重に判断します。
モノフィラメント
触覚の感度をチェックします。
検査
主に他の病気を排除するために、以下の検査が行われます。
ABI(足関節上腕血圧比)
足と腕の血圧を比較し、特に足の付け根から膝にかけての血管の状態を評価します。
CT、MRI
神経の圧迫(ヘルニアなど)や脳血管疾患(脳梗塞など)により、痺れが出ているのではないかと考えられている時に実施します。
必要な場合は連携する医療機関をご紹介します。
採血
糖尿病の診断に必要であり、ビタミン不足など他の疾患を除外するためにも行われます。
DPNチェッカー・筋電図・
神経伝導速度検査
神経障害の評価に用いられますが、これらの検査は複雑であるため、限られた施設でのみ実施されています。
糖尿病性神経症と糖尿病の関係、
他の合併症は?
糖尿病性神経障害は、糖尿病の経過年数が長く、血糖値のコントロールが不十分なほど発生頻度が高まります。これは、糖尿病の状態が不良であることを示唆しています。
さらに、血管や末梢組織へのダメージがある場合、他の微小血管障害(腎症や網膜症)や大血管障害(心臓や脳の病気)も同時に進行している可能性が高いため、これらの合併症のスクリーニングが必要になります。
糖尿病の悪化を防ぐためにも、血糖値の管理をしっかりと行うことが重要です。
実は、“痛みを感じにくい”方が
ゾッとする?
痺れを見過ごすことは、時に危険な状況を招くことにも繋がりますが、痺れそのものだけが問題ではありません。
神経障害が進行すると、高血糖や血流不全の影響で神経細胞が減少し、感覚が鈍くなることがあります。これはさらに危険な状態と言えます。
痛みは体の異常を知らせる重要なセンサーであり、これが機能しなくなると、以下のような問題が生じます。
- ケガに気づかない
- 傷の手当てをしない
- 傷口からの細菌感染により
重篤な感染症を引き起こす
さらに、壊疽(えそ:組織が腐敗する状態)が発生しても気づかないことがあります。気づいた時には手遅れになってしまうことが多く、下肢の切断や死亡に至るケースもあります。
痺れなどその他気になる症状がある場合は、早めに医療機関にご相談ください。
糖尿病の
危険度セルフチェックリスト
- 糖尿病を持つご家族や親戚がいる
- 40歳以上である
- 最近、尿の回数が増え、
夜間のトイレの回数が増えた - 食べても体重が減少する、
または最近急にやせた - 喉の渇きが異常に強い
- 全身のだるさや疲れやすさが出ている
- 健康診断で尿中に糖が検出された
- 健康診断で血糖値やHbA1cが高いと
言われたことがある - BMIが25以上である、
または最近体重が増加している
※BMI={体重(kg)}÷{身長(m)の2乗} - 外食が多い
- 食事を抜いて、次の食事で過食する
- 甘いお菓子やジュースを頻繁に摂取する
- 運動習慣がなく、車をよく利用する
- ストレスが多い仕事に就いている
これらの項目に6つ以上該当する場合は、糖尿病のリスクが高いとされています。早めに医療機関での受診をお勧めします。
3項目以上でも糖尿病予備軍の可能性がありますので健康診断や血糖値測定をお勧めします。