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「インフルエンザワクチンは風邪を予防するもの」と思っていませんか?

「インフルエンザワクチンは風邪を予防するもの」と思っていませんか?

実はそれだけではありません。

インフルエンザにかかってしまうと、体に強い負担をかけるため、高齢者、免疫力の低下した方、心臓の病気を持つ人にとっては命に関わる危険因子となります。

「インフルエンザにかかると心臓や腎臓に負担がかかる」ということは以前から知られていましたが、「心不全患者さんに対して、インフルエンザワクチンが命を守る効果(入院や死亡率の低下)があるのか」ということに関して、明確な科学的根拠は不足しておりました。

2025年9月6日に発表された論文では、急性心不全で入院した患者さんを対象に「ワクチンを接種する群」と「しない群」を比較したところ、インフルエンザワクチンを接種した群が、心不全の再入院や死亡のリスクを低下させたという結果が示されました。つまり、心不全の方にとって、インフルエンザワクチンが「感染予防」だけでなく「心臓を守る治療」の一つになるということが示されました。

Anderson CS, Hua C, Wang Z, et al. Influenza vaccination to improve outcomes for patients with acute heart failure (PANDA II): a multiregional, seasonal, hospital-based, cluster-randomised, controlled trial in China. Lancet. 2025 Sep 6;406(10507):1020-1031. doi: 10.1016/S0140-6736(25)01485-0. Epub 2025 Aug 30. 

ちなみに、呼吸器疾患(気管支喘息やCOPD)の患者さんに対してはどうかということですが、“死亡率の低下”をはっきり示した科学的根拠は未だ示されていないものの、入院や重症化を減らしうるという根拠は出ております。

心臓や呼吸器に病気を持つ患者さまには、インフルエンザワクチン接種をおすすめしています。
秋から冬にかけてのワクチン接種、ぜひ前向きに検討してみてください。

 

 

 

血をサラサラにする薬っていつまで続けるの?

久しぶりの投稿となります。
今回は、呼吸器や糖尿病と直接関連はないのですが、日常臨床でよく出会うテーマについて触れたいと思います。

「血をサラサラにする薬」と聞くと、健康に良さそうなイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、実際には、脳梗塞や心筋梗塞など血栓が原因の病気を防ぐために使用されます。

心房細動がある人
心筋梗塞・狭心症を起こした人
脳梗塞をすでに引き起こした人

が必要となり、原則中止することのない薬です。

「血を固まりにくくする」ということは、裏を返せば「血が止まりにくい」ということです。転倒などケガをした時に血がとまりにくかったり、知らず知らずに胃や腸から出血し、貧血が進行していることも珍しくありません。

命を守るために欠かせない薬でもありながら、これらの副作用のリスクを持ち合わせています。そのため、医師も処方にあたっては慎重に判断し、注意深く取り扱っています。副作用の観点で中止したくても、命を守るという観点で中止できないという場面が多々あります。

今回取り上げたいテーマは、心房細動(不整脈)治療後の患者さんに、いつまで血をサラサラにする薬が必要なのかということです。2025年8月31日に韓国の18施設(840人)を対象にした研究の論文が投稿されましたので、ご紹介したいと思います。

Kim D, Shim J, Choi EK, et al. Long-Term Anticoagulation Discontinuation After Catheter Ablation for Atrial Fibrillation: The ALONE-AF Randomized Clinical Trial.JAMA. 2025 Aug 31:e2514679

心房細動に対してアブレーション治療後、抗凝固薬はいつまで必要かという内容です。アブレーション治療で不整脈が起こらなくなった後、抗凝固薬を続けるべきか、やめてもいいかは、これまで明確な答えがありませんでした。
今回の研究では、アブレーション後に心房細動の再発が1年以上なければ、抗凝固薬を中止した方が、むしろ安全性が高い可能性が示されました。

観察期間が2年間なので、まだまだエビデンスの積み重ねが必要ではありますが、国内の観察研究でも似たような傾向が出ておりますので、今後の新しい治療の流れに期待が持てそうです。

当院でも、血をサラサラにする薬を内服している患者さまはたくさんいらっしゃいます。これからも、それぞれの患者さまが、どのような目的で内服しているのか、また、副作用は出ていないかなどを確認しながら、診療に臨んでいきたいと思います。

最近の論文で、特に興味深い内容でした。今後も、地域の皆様にお役立ちできるような質の高い最新の論文をできるだけわかりやすく発信していきたいと思います。

軽症〜中等症のコロナ感染症に対する治療薬は?

みなさん、こんにちは。

最近、クリニックの発熱外来において、コロナ感染症患者さんが増えている印象です。

コロナ感染症に関して、質の高い研究結果が、最近発表されたのでご紹介します。

Pan J, Chen M, Wang Z, et al. Drug treatments for mild or moderate covid-19: systematic review and network meta-analysis. BMJ. 2025 May;381:e076362.

この論文は、軽症から中等症のCOVID-19患者への薬物治療の効果を見ております。
166,230人の患者が登録された259件の試験のうち、187件(72%)が解析に組み入れられました。

結果、標準治療(解熱薬や水分補給等の対症療法)と比較して、

パキロビッドとベクルリーの有効性が示されました。

具体的には以下の通りです。

パキロビッド(R):1000人中25人程度(20~28人)入院を減少させる効果あり(割と信頼性あり)

ベクルリー(R):1000人中21人程度(7~28人)入院を減少させる効果あり(割と信頼性あり)

ラゲブリオ(R)やステロイド:信頼性は高くないけど、入院をそれなりに減少させる効果あり

カレトラ(R)(HIV治療薬):副作用による中止率が高く、有効性なし

数字だけを見ると、軽症から中等症のCOVID-19感染症に対しては、パキロビッドが第一優先薬になるのでしょうか。
当院のような比較的軽症のコロナ患者さんを見ることが多い診療所にとって、このようなデータは、非常に参考になります。

明日からの診療に役立てたいと思います。

帯状疱疹ワクチン、結局どっちを選べばいいの!?

こんにちは。

2025年4月から宝塚市で「帯状疱疹ワクチンの定期接種(公費負担あり)」が始まったこともあり、
「ワクチンって本当に打った方がいいの?」「そもそも帯状疱疹ってどんな病気?」といったお問い合わせを多くいただくようになりました。
そこで今回は、帯状疱疹という病気と、その予防法としてのワクチンについて、少しまとめてみたいと思います。
少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

まず、帯状疱疹についてですが、そもそもなぜ帯状疱疹になってしまうのかご存知でしょうか。子どもの頃にかかった「水ぼうそう」と関係があります。

水痘・帯状疱疹ウイルスが空気感染によって、鼻や咽頭のリンパ節に入り込み、その後、体内の血流に乗って、全身の皮膚や臓器に運ばれます。そのタイミングで、皮膚に水疱ができる、いわゆる水ぼうそうの状態となります。その際、目には見えませんが、水痘・帯状疱疹ウイルスは、皮膚に病変を作るだけでなく、実は、神経にも感染し、体からは排除されず神経の奥にひっそりと潜んだままになります。この神経への感染が、帯状疱疹を引き起こす元になります。

水痘・帯状疱疹ウイルスは、普段は免疫力のおかげでおとなしくしていますが、加齢やストレスで免疫力が低下したり、免疫を抑える薬などがきっかけで、暴走が始まります。いわゆる“再活性化”と言われるものです。
ウイルスの暴走(ウイルスの再活性化)は、感染源である神経から皮膚へ感染を引き起こし、皮膚に帯状の水疱を作ります。その過程で、神経細胞にダメージを与え、神経細胞を壊してしまいます(出血性壊死)。

この神経へのダメージが、帯状疱疹発症時の症状である「ピリピリ痛い」「チクチクする」といった状態です。この痛みに関しては、帯状疱疹自体が治ったとしても、持続することが多く、また鎮痛薬も効きにくいと言われます。なぜなら、ダメージを受けた神経は、焼け焦げた電気コードのようなものだからです。焼けこげた電気コードを修復するのが難しいのを想像してもらえればと思います。

帯状疱疹後の痛みは、痛みだけにとどまらず、日常生活や精神状態に大きな影響を与え、不眠や不安、ふさぎ込みにまでつながります。

帯状疱疹は、50歳代から発症しやすくなり、80歳までに3人に1人が発症する頻度の高い病気です。
また、50歳以上の帯状疱疹患者の5人に1人が帯状疱疹後の疼痛を発症します。
さらに、帯状疱疹患者の3%程度は入院加療を必要とします。
帯状疱疹に一度かかった人も、6~10%程度は再発するため、注意が必要です。

長々書きましたが、ここからが本題です。

帯状疱疹を予防するためには、現在日本では2種類のワクチンが存在します。

生ワクチン(弱毒水痘生ワクチン)と不活化ワクチン(シングリックスR)がありますが、
発症予防効果、神経痛予防効果、長期予防効果はシングリックスに軍配が上がります。

生ワクチンの予防効果について
50~59歳の健康な成人 69.8%の予防効果
60歳以上の健康な成人 51.3%の予防効果
(日本のデータでは、50歳以上の予防効果は27.8%でした)

に対して、

シングリックスの予防効果について
50歳以上の健康な成人 97%の予防効果
70歳以上の健康な成人 90%の予防効果
11.4年間の予防効果 87.7%

この違いは、“アジュバント”という免疫活性化機能がシングリックスには備わっている一方で、水痘生ワクチンには備わっていないからです。
“アジュバント”は、ワクチンの効果を高めるサポート役を担っています。
特に高齢者や免疫が弱い人では、しっかりと免疫をつけるのが難しいため、アジュバントが重要な鍵となります。一方で、アジュバントが備わっているワクチンでは、免疫応答が強いため、副反応が若干強く出る傾向にあります。

以上のことから、50歳以上または帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の帯状疱疹予防には、シングリックスをお勧めします。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の意外な自覚症状とは!?

こんにちは。
開院後、睡眠時無呼吸症候群(SAS)についてのご相談を多くいただくため、今回はその特徴や意外な症状についてまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。

睡眠時無呼吸症候群は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(CSA)の2つに大きく分けられますが、実際の患者さんのほとんどOSAですので、ここではOSA(閉塞性)について解説していきたいと思います。

OSAといえば、「肥満の中年男性」というイメージがあるのではないでしょうか。ご本人の日中の強い眠気や、ご家族からの「いびきが大きい」や「寝ている時に呼吸が止まっている」といった指摘によって来院されることが一般的です。
ですが、実はそれ以外にも、意外な症状があります。

それは、夜間の症状で言えば、「夜間頻尿(夜中に何度もトイレに行く)」や「睡眠中の窒息感(寝ている途中に息苦しさで目がさめる)」、日中の症状で言えば、「起床時の頭痛」「起床時の疲労感」です。
これらの症状は、自分で気付けるサインです。
ご家族からの指摘だけでなく、こうした自覚症状からも疑うきっかけとなりますので、一度ご相談いただければと思います。

他に、疑う客観的な所見としては、「肥満」以外に、「鼻閉(鼻が詰まりやすい)」、「顎が小さい」、「喉の奥が狭い」というのが挙げられます。「喉の奥が狭い」というのは、ご自分で鏡を見て、口蓋垂(のどちんこ)がどれくらい見えるかが一つの目安となります(参考:修正マランパチ分類)。

これらは、咽頭のスペースが狭いために舌が気道を閉塞しやすい環境となるためです。また、日本人は欧米人と比較して、解剖学的に頭部・顔面に奥行きがないため、肥満がないにも関わらず、OSAを発症しやすいと言われています。

他に、解剖学的な問題だけでなく、上気道の筋肉の緊張度が低下することでOSAを発症することも言われており、主には、加齢、アルコール、睡眠薬の使用などが関与します。

OSAは、典型的には肥満の中年男性が多いですが、小児、高齢者、女性にもみられます。

小児の自覚症状は、「朝の寝起きが悪い」や「不注意行動が多い」などです。小児のOSAの多くは扁桃肥大が原因ですので、気になる方は、一度お子様の口の中を見てあげてください。小児の治療第一選択は、アデノイド切除術・扁桃摘出になります。

女性の自覚症状は、不眠症状、足がムズムズする、悪夢を見るなどの症状を訴えることがあり、閉経後に増えると言われます。なぜ閉経後に増加するかというと、もともと、女性ホルモンは気道周囲の筋肉の緊張を高め気道を閉塞しにくくする役割がありますが、閉経後に女性ホルモンが低下すると、その役割が減少し、上気道を閉塞しやすくする要因となるためです。余談ですが、妊娠のタイミングでも、女性のOSAは増加します。女性ホルモンの変化により鼻粘膜の状態を変化させ鼻閉になる環境が誘発されやすくなること、また、体液量が増加し、上気道が閉塞しやすくなるからと言われています。

検査の方法として、自宅でできる簡易モニター検査と、入院または自宅で行う精密検査があります。今回は詳しくは書きませんが、簡易モニター検査は、「呼吸」の状態は測定できますが、「睡眠」そのものの深さや質までは測定しません。一方、精密検査は「呼吸と睡眠」の両方を測定することができます。簡易モニター検査では、測定された呼吸から、睡眠を推測するというイメージです。ただ、簡易モニター検査は、自宅で簡単にできる検査でので、スクリーニングに非常に適しています。
ご興味のある方は、一度当院にご相談ください。

長くなりましたが、OSAの自覚症状は、日中の眠気やいびきだけではありません。「夜中にトイレが近い」「朝から疲れる、頭痛がある」など、一見関係なさそうなことも、実はサインかもしれません。
疑わしい症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

開院1ヶ月のご報告と御礼

みなさま、こんにちは。
まきお内科クリニックの院長牧尾健史です。

おかげさまで、当院は開院から無事に1ヶ月を迎えることができました。
この1ヶ月、多くの方々にご来院いただき心より感謝申し上げます。
まだまだ至らぬ点も多いかと思いますが、「安心して相談できるかかりつけ医」を目指して、今後もより一層努力してまいります。

今後ともまきお内科クリニックをどうぞよろしくお願いいたします。

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